日本古生物学会第162回例会研究発表


                中新世サンゴイワシの発光器の化石

  田中源吾(群馬県博)
  水野吉昭(名古屋市)
  前田晴良(九州大博)
  大路樹生(名古屋大博)
  田崎義勝(田崎物産)


  生物発光は,威嚇,求愛,目くらましなど暗闇で生きる生物にとって重要なアイテムである。
  特に多くの深海魚に見られる発光器は,チョウチンアンコウのイリシウムのように獲物をおびき
  寄せるための道具ではなく,逆にハダカイワシやムネエソの腹側の発光器のように,上から降り
  注ぐ光と同じ波長の光を出すことで,下から迫る捕食者から身を守る役割を持っているカウンタ
  ーイルミネーションとして機能していたと考えられる発光器の化石は,古くは古第三紀まで
  遡ることができ,いくつかの化石報告がある。しかし,発光器の化石の研究は皆無であり,発
  光器のように見えるものが,色彩パタンの痕跡である可能性も捨てきれない。
  そこで,筆者らは愛知県知多半島に分布する中期中新世師崎層群から産出したハダカイワシ
  (Diaphus sp.)の化石について,発光器と思われる部位(図の矢印)についてSEMを用いた詳
  細な形態観察を行った。その結果,メラニン系の色素顆粒の他,タペータム(反射板),さらに
  は発光バクテリアらしき化石を発見した。凍結乾燥処理を施しSEM観察を行った現生のハダカイ
  ワシの発光器にも同様な構造物を確認した。これらの形態観察の結果から,中新世のハダカイワ
  シが発光器を持っていたことはほぼ疑いないと考えられる。発光器の化石は,現生のハダカイワ
  シと同様,体の腹部に集中していた。このことは,中新世のハダカイワシが現在のハダカイワシ
  と同様,カウンターイルミネーションを用いて捕食者から身を守っていたことを示唆する。

  「講演予稿集原稿(原版)」



  Photophores preserved Miocene fossil lanternfish
  日本古生物学会例会講演予稿集 巻:162nd ページ:15
  発行日:2013年1月25日


  ↑上記クリックにて予稿集がご覧頂けます。/ 日本古生物学会公式ウェブサイト





  リュウグウハダカ個体標本。(樹脂封入標本製品)ID:1209091025

  学会資料として会場にて製品公開 / 横浜国立大学 2013年1月26日
  − Tasakiコレクション −(永久保存製品)




  共催 / 横浜国立大学
      国立研究開発法人 海洋研究開発機構



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