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深海性貝類の調査 / 標本 深海性貝類については堆積物分析調査として、採取、保存を行っています。深海性 小型貝、微小貝については、生息種、形態等、未だ十分な調査がなされていないの が実情です。また、貝類標本については、これまで身抜きした乾燥標本が主流で、 時間の経過とともに退色、変色が生じ、色彩等を含め状態の良い標本が残されてい ないように思われます。身抜きしますので本体(軟体部)組織は廃棄されています。 長期保存中に欠損、微小貝については紛失等も少なくありません。貝類標本の作成 については、採取時の状態で薬品処理を行い樹脂封入いたしています。身抜き、熱 処理、空気乾燥等の処理はいたしていません。貝殻(空殻)は標本製品対象外とし ています。自然の色彩、形状、軟体部(本体細胞組織情報)を含め保存されるよう 作成いたしています。樹脂封入標本として作成したものは深海生物学術標本製品、 また、乾燥標本等は深海生物学術標本(参考標本)としています。 ジュズカケクダマキ カブトアヤボラ エゾバイ科の一種とイソギンチャクの一種。 アラレナガニシ ヒメエゾボラモドキ ジュウリョウフデシャジク フクロナワボラ ワダツミマメウラシマ ウバシタダミ近似種 サガミヒメシャクシ テラマチスイフガイ マツカワガイ(幼貝) ヘソアキトゲエビス コウシトゲニナ オオトゲニナ ハチノコガイ ウラウズカニモリ フクレシタダミ 撮影 / 鳥羽水族館 ヒメハリセンボンに付着するイガイ科の一種。 採取日:2014年1月6日 採取地点:34°52′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:340m オオコシオリエビに付着するイガイ科の一種。 上記ヒメハリセンボンに付着する種と同種であるかは不明です。 採取日:2017年1月25日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:360m キザミバマユイガイ成貝(左)、発生後間もない幼貝(右) 採取日:2016年3月21日 採取地点:34°56′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:420m ヒバリガイ属の成貝(左)、成貝表面に付着していた発生後間もない幼貝(右) 採取日:2016年9月11日 採取地点:34°54′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:360m スイフガイ科の一種。(同個体を向きを変えて撮影) 同海域、深度に生息する酷似した2タイプ。別種と思われます。 採取日:2015年4月2日 採取地点:34°55′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:320m ワタゾコシロガサ科の一種。 沈木付着状態にて採集された2タイプ。左3個体は殻頂が高く、右3個体は低い。 透けて確認出来る軟体部の内部構造にも違いがあるように見えます。別種と思わ れます。ニッポンワタゾコシロガサ(左)、ミソノワタゾコシロガサ(右)の可 能性があるものと思います。 採取日:2016年5月15日 採取地点:34°58′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m ワロウソクツノガイ(左)、ロウソクツノガイ(右) 同海域、深度に混在にて生息しています。 採取日:2016年9月25日 採取地点:34°54′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:420m ワタゾコナデシコ。 2タイプ色彩、通常色彩個体(上)、純白個体(下)。同じ1本のヤギ類の枝に 付着していました。 採取日:2016年9月15日 採取地点:34°52′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:380m 軟体部についても貝色彩を反映した色合いとなります。 スミスハネガイ。 1個体目の採取。 駿河湾は生息域南限となるためか希産種です。 採取日:2017年4月20日 採取地点:34°54′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:420m リュウグウウネウラシマ / 殻厚タイプ(左2個体)、殻薄タイプ(右2個体) 同海域、深度に混在して生息しています。 採取日:2016年4月24日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:460m ナシガタミヤシロ。 1個体目の採取。 駿河湾は生息域北限にあたるためか希産種です。 採取日:2017年3月30日 採取地点:34°56′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m ワタゾコシロアミガサ(上)、ツクシガイ科の一種(下) 沈木付着状態にて採取。 採取日:2016年3月12日 採取地点:34°44′N , 138°40′E (駿河湾 松崎沖) 採取深度:460m ココヤシの果実に付着するハリナデシコ。 古いココヤシの果実です。南方より黒潮に乗り駿河湾へたどり着き深海底へ 沈んだものと思います。ハリナデシコが1個体付着しています。 採取日:2017年2月14日 採取地点:34°58′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:340m ハリナデシコ。(2タイプ/同個体の表裏写真) 左個体は通常採集されるハリナデシコ、右個体は1個体目の採取となります。 同日、同海域にての採集となりました。右個体は希産種であるギンリンハリ ナデシコの可能性もあります。 採取日:2016年12月7日 採取地点:34°54′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m イガイ科の一種。 沈木内部に生息していました。微細な個体で殻は薄く透明であるため軟体部が 透けて確認出来ます。ガラス細工のようです。1個体のみの採取です。 採取日:2016年11月13日 採取地点:34°55′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:320m イガイ科の一種。 1つの沈木に同種と思われるイガイ科の一種が2個体生息していました。 形態比較するとわずかに差異が確認できます。 採取日:2016年9月15日 採取地点:34°52′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:380m 沈木樹皮裏より採集された二枚貝。(不明種) 同じ沈木の樹皮裏のわずかな隙間に同種と思われる4個体の二枚貝が生息して いました。以前にも同様の沈木環境状態にて採取されており、沈木に入り込ん だ泥質に依存した生活史を持つスナメガイ超科に含まれる種のように思います。 現在、この4個体は研究機関にて所蔵、調査中です。 採取日:2017年9月9日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m ウミウサギガイ科の一種。 ウミエラの一種に付着にて採取されました。付着状態は弱く通常、底引き網漁 では欠落となるものと思います。1個体のみの採取です。 採取日:2017年3月12日 採取地点:34°52′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:460m シャクシガイ科の一種。 小型で殻は薄く内部が透けて確認できます。研究機関にて同定作業を 行ないましたが種の特定に至りませんでした。 採取日:2018年11月6日 採取地点:34°55′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:360m チョウシユキバネ。 ユキバネガイ属の微細な種です。チョウシユキバネの分布は鹿島灘から 房総半島沖、深度200〜300mとされます。本種であれば駿河湾で 初めての確認となります。 採取日:2020年2月24日 採取地点:35°04′N , 138°48′E (駿河湾 静浦沖) 採取深度:280m スナメガイ科の一種。(不明種) 1個体目の採取です。スナメガイ科に近縁ではと思いますが種の特定に 至りません。 採取日:2017年3月30日 採取地点:34°56′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m ミジンギリギリツツガイ科の一種。 採取時には堆積物の二枚貝空殻表面に付着しており、動作を確認して います。ツノガイ類(掘足綱)に似ますが巻貝類(腹足綱)に属しま す。深海領域からこの科の採取報告はないのではと思います。 採取日:2018年10月3日 採取地点:34°51′N , 138°41′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:480m 微小貝(1) 赤色系の美しい種で蓋は白色で厚みがあります。1個体のみの採取です。 採取日:2018年11月21日 採取地点:34°51′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m 微小貝(2) 採取日:2016年10月16日 採取地点:34°56′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:420m さらに微小貝。(沈木に2個体付着) 並べて形態比較しましたが、同種のようです。世界最小の貝が殻径0.6mm と言われますから、ほぼ同サイズとなります。 採取日:2016年10月20日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:360m 沈木に付着する微小貝。 1個体のみの採取。 採取日:2022年11月27日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:320m 小型のナマコ種に付着する寄生巻貝。 1個体のみの採取。 採取日:2023年9月17日 採取地点:34°44′N , 138°40′E (駿河湾 松崎沖) 採取深度:380m 白色ウニ種に付着する寄生巻貝。(3個体寄生) 1例目の採取です。このウニとは別種の小型の白色ウニ種(和名なし)に 付着する寄生巻貝は以前に採集はありますがこの種は初めてです。 採取日:2023年10月18日 採取地点:34°44′N , 138°40′E (駿河湾 松崎沖) 採取深度:380m マメキゴコロガイ。(採取時の状態) マメキゴコロガイは通常、泥質堆積物とともに採取され貝自体も殻表面 に泥質を厚く付着させています。泥塊ですがわずかに特徴的な本種の貝 形状が確認できます。 採取日:2016年11月13日 採取地点:34°55′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:320m アケビガイ。 採取日:2019年12月1日 採取地点:34°37′N , 138°22′E (駿河湾 御前崎沖) 採取深度:360m アブラキヌタレガイ。 極希産種。鯨骨生物群集に含まれる種です。 採取日:2019年12月1日 採取地点:34°37′N , 138°22′E (駿河湾 御前崎沖) 採取深度:360m ツノガイの一種。(空殻) 泥質堆積物とともにツノガイの空殻が採取されました。表面に微細な生物が 付着しています。動作は確認できませんでした。 採取日:2017年2月14日 採取地点:34°58′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:340m ツノガイの一種。(空殻) 不明種。 採取日:2019年3月2日 採取地点:34°54′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:460m 二枚貝空殻。 これも泥質堆積物とともに採取されたものです。内側面に単体サンゴ、コケ ムシ、および環形動物類の棲管が付着しています。いずれもかなり古いもの で化石と評価できるものと思います。 採取日:2018年4月29日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:480m 堆積物中に含まれる空殻。(1) 採取日:2018年4月21日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:420m 堆積物中に含まれる空殻。(2) 泥質堆積物とともに様々な貝類の空殻が採集されます。しかしその多くは生貝での 採集はありません。過去に生息し現在は分布域の変化、または絶滅種となったため 生貝での採集がなされないように思います。かなり古い時代のものが化石として状 態良く堆積、保存されているものと考えます。 採取日:2018年2月22日 採取地点:34°51′N , 138°41′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m 上記(2)の巻貝空殻4個は現在、研究機関にて所蔵、調査中です。以下に研究機 関よりの調査経過報告を記述します。 (調査経過報告) 「貝類研究者3名にて同定を行いましたが、過去の文献に記載が見当たりません。 暫定的にSolariella sp.としました。未知種の可能性があります。」 2018年8月24日付 。。。とのことです。 堆積物中に含まれる空殻。(3) ヤマトヨウラクに似ますが縦帳肋が未発達で水管溝も直線的で短いです。 採取日:2017年11月20日 採取地点:34°55′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:360m 堆積物中に含まれる空殻。(4) シャクシガイ科の一種です。現生種では台湾近海に生息する種に形態が近似 します。 採取日:2018年5月12日 採取地点:34°52′N , 138°41′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m (表) (裏) 堆積物中に含まれる空殻。(5) ミドリアオリと思われる二枚貝です。現在の分布は紀伊半島以南、熱帯域 となり潮間帯から水深20m付近に生息します。裏面には真珠光沢が美し く保存されています。 採取日:2018年9月20日 採取地点:34°52′N , 138°41′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:480m (表) (裏) (表) (裏) 堆積物中に含まれる空殻。(6) かなり古い時代の化石と思われます。フィリピン海プレート上から産出される もので学術的に貴重なものと考えます。 採取日:2018年10月3日 採取地点:34°51′N , 138°41′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:480m (表) (下側面) (左側面) 堆積物中に含まれる空殻。(7) イタヤガイ科と思われる二枚貝です。表面に顕著な起伏があり起伏部分 の殻は厚みを増します。わずかに生体時の赤色が保存されています。こ れまでに生貝での採取はありません。 採取日:2018年11月15日 採取地点:34°50′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:420m 堆積物中に含まれる空殻。(8) トウキョウホタテ。(絶滅種の化石) 約300万年〜1万年前に生存した種です。上写真の空殻は状態が良く、わずかに生体時 の赤色が残ります。駿河湾奥部の深度130mから採取された本種の化石について放射性 炭素年代を測定したところ13690±60yrBP(補正値で約16000年前)を示した との論文もあります。16000年前は日本では縄文時代始期にあたります。駿河湾の底 引き網漁では時々揚がり珍しいものではありません。戸田の底引き網漁漁師の間では以前 より知られていて”ホタテガイの捨て殻”とされていました。ホタテガイの生息域南限は太 平洋側では千葉県とされており駿河湾には生息していません。 採取日:2020年10月3日 採取地点:34°51′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:380m トウキョウホタテ。(発生後、間もない個体) 採取日:2019年3月9日 採取地点:34°51′N , 138°41′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:460m 堆積物中に含まれる空殻。(9) これまでに生貝での採取はありません。 採取日:2024年2月3日 採取地点:34°44′N , 138°41′E (駿河湾 松崎沖) 採取深度:380m 堆積物中に含まれる空殻。(10) イトマキボラ類と思われる個体。 採取日:2018年11月21日 採取地点:34°51′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m 堆積物中に含まれる空殻。(11) クルマガイ科の一種と思われる個体です。これまでに生貝での採取はあり ません。 採取日:2019年5月12日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m 堆積物中に含まれる空殻。(12) これまでに生貝での採取はありません。 採取日:2017年11月20日 採取地点:34°55′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:360m 堆積物中に含まれる空殻。(13) ムツキウメ。 駿河湾も本種の分布域ですがこれまでに生貝での採取はありません。 採取日:2018年11月6日 採取地点:34°55′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:360m 堆積物中に含まれる空殻。(14) 採取日:2017年5月1日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:430m 堆積物中に含まれる空殻。(15) 採取日:2021年10月19日 採取地点:34°56′N , 138°44′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:380m 堆積物中に含まれる空殻。(16) 上側に形態比較のためサガミハラブトツノガイ(生貝採取)を配置しました。 下側が泥質堆積物とともに採取された空殻です。ハラブトツノガイの特徴を 持ちますが駿河湾にはこのような大きなサイズの種は生息しません。 採取日:2018年9月12日 採取地点:34°56′N , 138°43′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:380m ヤギ類の根に封じ込められた巻貝。 高さ80cmほどのヤギ類です。根の裏面を観察すると小さな巻貝空殻が ヤギ類と同化しています。表面は完全にヤギ類組織に覆われ、わずかに形 状が確認できます。取り出してクリーニングしたものが下写真となります。 封じ込められてどれほどの年月を経たものでしょうか。かなり古い殻質で これまでに生貝での採取がない種です。アクキガイ科に含まれる種のよう に思います。 採取日:2017年10月9日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:460m 上記と同じヤギ類です。根の表面にはナミマガシワ科の一種が付着して います。右写真は貝裏面です。一般的にナミマガシワは潮間帯など浅海 に生息するとされています。上記でもナミマガシワ種を掲載しています が、その種とは別種です。貝表面にはハオリムシ類近似種が2個体付着 しています。 採取日:2017年10月9日 採取地点:34°53′N , 138°42′E (駿河湾 戸田沖) 採取深度:460m トサツノガイ サフランツノガイ サガミハラブトツノガイ ワロウソクツノガイ セトモノツノガイ マボロシツノガイ ミカドツノガイ ヒシツノガイ ユキツノガイ ヤカドツノガイ シャクシロウバイ フタカドソデガイ カゲロウソデガイ オオコウダカスカシ クダマキガイ科の一種。(未記載種) オーストンフクロウニヤドリニナ Melanella araeosomae (Habe, 1992) / 個人所蔵 − 深海性微小貝 − 下写真は駿河湾、深度280m〜460mにて生貝採集された個体です。深海性微小貝に ついてはほとんど研究されておらず膨大な未記載種が存在するとされます。これまでの調 査採集で1個体のみの採取個体も多くあることから駿河湾内でも特定地点にのみ生息する 固有種が多種存在するものと考えています。 「深海倶楽部」一覧 |
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